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1章 水の移動習性

 雨漏りは多種多様であり、プロでも原因が分からず、相談を受ける事があります。しかし、実は雨漏りの場所はほぼ決まっています。また、水の動きには一定の法則がありそれに従って雨漏りは起こります。すなわち、水の性質を理解し、雨漏りが起き易い場所を熟知することが大切です。その2つさえ押さえれば、あとは水の動きを封じればよいのです。この章では基本となる「水の移動習性」を説明します。

 「移動習性」というと、難しく思われるかも知れませんが、以下①~⑤に述べるような実は簡単なものなのです。

①重力による作用

ほとんどの雨漏りにかかわっています。分かりやすくするために以下の(イ)~(ニ)に分類しました。                        

(イ)水は高い所から低い所へと流れていきます。

 瓦、木材、壁、板金、窓等などに少しでも凹凸や傾斜があれば、水は低い方へ流れます。そして、その傾斜が急であるほど、また、ある程度水量が多いほど、水の流れは早くなります。しかし、少しの凹凸の差や傾斜を見つけられる人は少なく、又、眼の錯覚もあって、思いがけない水の流れに出会うことがあります。水の通路の高低に目を慣らしている私達は、比較的小さな傾斜を見分ける事ができますが、一般の方は数ミリの高低を見分けられないので、水の流れを誤ったり、気付かないで雨漏りになったりすることがあります。

 もし傾斜が気になれば、コップ一杯の水を流せば確認できます。

(ロ)水は障害物に当たると飛び散ります。

 先に述べたように、傾斜が急であるほど、水量が多いほど、水の流れは速くなります。例えば、多量の水が2階の樋から1階の庇に落ちるのを、想像してみてください。大量の飛び散った水滴は瓦と瓦のごく小さな隙間(本来は雨の入らないところ)へ入り込み、雨漏りに至ることがあります。

(ハ)水は容量を超えると溢れます。

  例1:流れの長い屋根(棟から軒の距離が長い)は軒先に多量の水が流れ、強風時に雨漏りを起こします。

 例えば、棟から軒先まで10枚の瓦が並んでいた場合、1番上の棟際の瓦には1枚の瓦に降った雨だけが流れますが、1番下の軒先の瓦には10枚の瓦に降った雨が集まってきます。このように流れが長い屋根ほど、軒先には大量の水が流れます。軒先の瓦の大きさや形状によっては、一枚の瓦の容量が少なく、容量を超え水が溢れることがあるのです。実際、奈良の東大寺大仏殿の屋根は非常に流れが長いため、特大の瓦を使っています。

例2:図のように屋根の谷板より、大量の水が一箇所(1枚の瓦など)に流れる時

例3:樋からの水が溢れ、庇などに飛び散る時など

例4:建物内部へ入った水は、最初、木や土などにしみ、凹んだ所に溜まります。そこが一杯になると始めて流れ出し、雨漏りになります。このタイプの雨漏りは、気付くのが遅れます。雨量の多いとき、長雨のときだけ漏れます。時間差の伴う雨漏りの時もあります。

(ニ)目に見えない程の小さな穴にでも水が入り込みます。

 瓦の素漏りや壁の素漏りは、時が経つと少しずつ埃で穴がつまり、止まります。逆に振動や収縮、膨張などで出来る穴は、大きくなる可能性があり、しっかり防水処理する必要があります。どちらにしても水が入り込む所では屋根下地や壁下地が湿り、カビが生えたり腐食したりするなど、不快なものです。瓦、壁、板金などの小さな傷や、業種間の取り合い部分の小さな隙間にも注意してください。

②風力

 風が強いときは、水を吹き上げたり、吸い上げたりする場合があります。さらに風が壁に当たると、一ヶ所に合流して強くなったり、衝突して弱くなったり、風向きが変わったり、渦巻いたり、建物や地形によって変化します。風の逃げ場の無い突き当たりの場所ではほんの僅かな隙間でも風が通り抜け、水滴を押したり、吹き上げたりします。(見つけにくい雨漏りです。)

 直接その場所で雨漏りが起こらず、水が一ヶ所に集まり、①のⒸのような雨漏りが風を受けたとは別の場所に起こることもあります。   

          

③毛細管現象(高いところへ登ったり、又、水平移動したりします)

 水が建物内部の屋根土、壁土、糸くず、わら、草などに触れますと、毛細管現象により、重力に逆らって上向きや横向きに動いて雨漏りの原因を作ります。

(注)毛細管現象:液体には表面張力がありますが、毛のように細い空間(毛細管)に液体が入ると、この表面張力によって液体が毛細管の中を進んでいきます。これが毛細管現象です。 

 

④水蒸気になり移動(建物のあらゆるところ場所へ移動します)(≒結露)

 結露とは、低温の壁や窓ガラスなどに空気中の水蒸気が凝結して水滴がつく現象(広辞苑)です。冬の寒い日、自動車の窓ガラスが水滴で曇る現象と同じです。外気と室内の温度差で水滴ができ、これが集まって天井や壁などを濡らします。最近の住宅の多くは、冷暖房効果を高めるため、壁や屋根からの通気を遮断する結露しやすい構造になっています。結露は外気と室内の温度差が大きいほど、又、湿度が高いほど、換気が少ないほど顕著に起こります。冬の室内温度は20℃、湿度が50%、外気が0℃としますと、表1から、1㎡の空気から17.2g÷2-4.8g=3.8gの水滴ができる計算になります。

天井や屋根下地付近ではさらに温度の高くなる家が多く、30℃近くになり、表1のようにさらに多くの結露(10.4g)が出来ることになります。この水滴が流れて天井などにシミをつくると雨漏りと勘違いされます。        

結露量

30℃湿度50%の状態から温度が下がった場合について

上記の条件での含有水蒸気量 15.2g/㎥

飽和水蒸気量 g/㎥

結露量g/㎥

30℃

30.4

25℃

22.8

20℃

17.2

15℃

12.8

2.4

10℃

9.3

5.9

5℃

6.8

8.4

0℃

4.8

10.4

-5℃

3.4

11.8

建物の内部の湿気は、外部から入る湿気と、生活に必要な炊事、洗濯、風呂、便所など内部から発生する湿気があり、水分は水蒸気となって建物の隅々まで移動しています。水蒸気は気温の低い所に当たると結露します。結露は温度差と湿度との関係で起こりますので、外気と内気の接するところや、炊事、風呂等の湿気の多い窓や屋根の下地付近が多く、ほぼ決まった場所に起こります。

結露は、温度差が大きいほど、又、湿度が高いほど、水滴の量が多くなり、建材の吸収量を越え、建物を傷めるまでになることもよくあります。

雨漏りの原因を調べに行き、結露だったというケースは非常に多くあります。(例えば、実際あったケース①冬に新築入居で雨漏りとのクレームだったが、エアコンによる温度差による結露だった②吹き抜けの家③外気と内気の間の層が薄い・壁や天井が薄い家などの結露)

⑤水は気温が0℃以下で氷になります。(凍害と雪害の可能性)

  瓦に含まれている水が凍ると体積が約9%増加します。その体積の増加する圧力で瓦が割れることがあります。寒冷な地域に起こる問題です。

最近は凍害対策も進んできていますので、確かな瓦屋に任せれば安心できると思います。(詳細は私が書きました、凍害理論をご参照下さい)

  

以上が私なりに考えた水の移動のパターンで、雨漏りを見つける基本です。一つ一つは誰もが知っているような、簡単な事ですが、実際、意識していないと気が付かない事が多いのも事実です。特にこれらが複雑に関わっている場合はより困難になります。この水の動きを熟知して、今後の雨漏り修理に対処してほしいと思います

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